不整脈とは
通常であれば心臓は一定のリズムで脈が打たれています(正常で落ち着いている健康な成人の場合、1分間で50~100回ほど拍動)。なぜならこのような状態の方が血液を効率的に送りやすくなるからです。しかし何らかの原因によって、脈が速くなる(頻脈)、遅くなる(徐脈)、リズムが一定しなくなることがあります。これを不整脈と言います。
よくみられる症状ですが、頻脈の場合は、動悸(ドキドキする)、冷や汗、吐き気、めまい、意識消失などです。徐脈の場合は、意識が遠のく、めまい、動作時に息切れをするといったことです。
このほか、脈が乱れる不整脈(期外収縮)であれば、脈が飛ぶ、抜けるという感覚がみられるようになります。
不整脈の原因として考えられるのは、何かしらの心疾患(狭心症、心筋梗塞、心不全 など)、甲状腺の異常、肺疾患といった病気が関係していることもあれば、加齢、疲労やストレス、睡眠不足のほか、薬剤によって引き起こされることもあります。一方で人間の心臓は1日に10万回程度拍動しますので、これといった原因がなくとも期外収縮などの治療を要さない不整脈により脈が乱れることもあります。
そのため、身体所見や症状だけでは危険な不整脈か無害性の不整脈か区別するのが困難なことが多いので、心電図などで一度検査を行うようにしてください。
院長は不整脈専門医という資格を有しており、これは循環器専門医取得後、さらに研鑽を積み取得できる資格です。
もちろん基幹病院には不整脈専門医を有する医師は各施設に一人程度はいますが、専門医にかかるためには紹介状が必要になります。
不整脈専門医を有する開業医は千葉県で現時点では2人、東葛地区では当院長1人だけなので、「動悸」「失神」「胸部違和感」などに対し気軽にご相談下さい。
このような症状はご相談ください(例)
- 動悸(ドキドキする)
- 少し動いただけでも息切れがする
- 脈が乱れる
- 冷や汗
- 吐き気
- めまい
- 失神した
- 健診などで心電図異常を指摘された など
頻脈性不整脈
心房細動
心房細動の患者数は国内で100万人以上、年齢とともに増加し75歳以上の5〜10%とも言われているため、珍しい不整脈ではありません。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の報告では、65歳未満の約2%、65歳以上の約9%が心房細動を発症していると言われているので有病率はもう少し多いのかも知れません。
心房細動は、心房が高頻度かつ不規則に興奮し、その興奮波を房室結節がある程度心拍数を制御して心室に伝え、心室を興奮させるため不規則な頻拍になります。
そのため心房細動が始まると、患者さんは強い動悸を自覚しますが、なかにはまったく症状を感じない人まで様々です。
この不整脈は2つの大きな問題があります。それは頻脈と左房内血栓です。前者は頻脈の結果、頻脈原性心不全をきたし呼吸困難などを起こします。
後者は心房が高頻度で興奮するため、心房は痙攣し止まったような状態になります。血液は止まってしまうと固まってしまうので、心房という大きなスペースに血の塊ができ、それが頭の血管に飛べば大きな脳梗塞を起こします。
そのため、治療の基本は頻脈予防と血栓予防になります。特に血栓予防が重要となります。
検査・治療について
心房細動は症状出現時の心電図があれば比較的簡単に診断がつきますので、動悸感があれば、まずは当院にご相談をしてください。
自覚症状があるときの心電図がとれない場合は心電図検査のみならず、ホルター心電図や携帯心電計、心エコー(心臓超音波検査)を行い診断していきます。
検査の結果、心房細動を認めた場合、まずは血液をサラサラにするお薬(抗凝固薬)を使用しての血栓予防が重要となります。
頻脈のコントロールは薬物療法や非薬物療法が行われます。心房細動による頻脈の薬物療法は抗不整脈薬を用いて心房細動を規則正しい本来の心拍である正常洞調律にもどしこれを維持する「リズムコントロール」、脈拍数を抑える薬を用いる「レートコントロール」が中心になります。
心房細動は抗凝固薬を用いて血液をサラサラにしていれば、「レートコントロール」「リズムコントロール」とも治療効果に差がないことが知られていますので、患者様の状況に合わせて治療法を選択します。
薬剤抵抗性で症状が強く出ている場合は、カテーテルアブレーションといった治療などが行われることがあります。
心房細動が持続してしまう原因はいまだ不明ですが、そのきっかけは肺静脈から期外収縮が左房へ入り込むことで心房細動がスタートすることが多いことが知られています。
肺静脈から左房期外収縮が入ってこられないように、4本の肺静脈と左房の間にカテーテルで電気的に「火傷(やけど)」をつくるのが、肺静脈隔離術という心房細動に対するカテーテルアブテーションです。
近年では方法論は一緒ですが、アブレーションの代わりに肺静脈に風船を密着させ、冷却ガスで風船を冷却することで肺静脈組織を冷凍壊死させることにより肺静脈から心房に電気信号が伝わらないようにする治療法(クライオバルーン)もあり、こちらでは従来の高周波カテーテルアブレーションに比べ手術時間を短縮することもできます。
院長は不整脈専門医でありあらゆる治療法に精通しているのでお気軽にご相談下さい。
発作性上室性心室頻拍
発作性上室頻拍とは、正常な電気刺激の通り道以外に別の通り道(回路)が存在し、その回路を電気刺激が通ることで脈が早くなる不整脈で、不整脈の回路が心室より心房側に存在するため、上室性(=心室より上)と呼ばれています。細かく言うとWPW症候群の房室回帰性頻拍、房室結節リエントリー性頻拍、心房頻拍の3種類が含まれます。
症状は、突然始まり(sudden onset)、突然止まる動悸で患者様が「何時何分に動悸が始まった/止まった」といった具合に、症状の始まった時点がはっきりと自覚できるのも特徴です。
検査と治療
心房細動と同様に症状出現時の心電図があれば比較的簡単に診断がつきます。
自覚症状があるときの心電図がとれない場合は心電図検査のみならず、ホルター心電図や携帯心電計、心エコー(心臓超音波検査)を行い診断していきますので、まずは当院にご相談をしてください。
それでも不明な場合は足の付け根や首から電極カテーテルを挿入して電気生理学的検査(EPS)を行うこともあります。
治療に関しては薬物療法としては房室結節の伝導を抑える薬で頻脈を十分にコントロールできます。
WPW症候群の房室回帰性頻拍、房室結節リエントリー性頻拍ではアブレーション治療後の再発防止率が90%を超えており、なおかつ一度治療してしまえば薬の内服中止も可能なことからカテーテルアブレーションが第一選択の治療と認識されています。
心室細動/心室頻拍
心臓の中でも全身に血液を送り出す心室で突然けいれんの起こる病気です。
不規則かつ小刻みにけいれんするために、全身へ血液が送り出せなくなります。そのため意識消失やけいれんが起こります。
心室細動は致死的不整脈と呼ばれており、数分この状態が続くと死に至ります。原因は心筋梗塞・狭心症などの虚血性心疾患、心筋症、弁膜症、ブルガダ症候群やQT延長症候群など遺伝性不整脈など心臓に問題がある場合だけでなく、薬剤、血液の電解質異常、心臓振盪(野球のボールがぶつかった)などもあります。
検査と治療
根本的な治療は電気的除細動になりますが、正常な心臓の動きを取り戻すまで心臓マッサージを継続的に行う必要があります。
心室細動になってしまうと命を落とす可能性が高いので、心疾患を有する患者様は心電図、ホルター心電図や携帯心電計、心エコー(心臓超音波検査)を行い危険な予兆を見逃さないことが大切です。
このような致死性不整脈は予兆として、めまい、失神、意識消失などを起こしていることが多いので、そのような症状がある場合はホルター心電図などをお勧めします。
それでもはっきりしない場合は電気生理学的検査(EPS)を行うこともあります。
一度でも心室細動を起こしたことがありその原因が除去できるものでない場合は植込み型除細動器を体内に装着します。心室細動の発作を抑えるために抗不整脈薬を用いることもあります。
徐脈性不整脈
洞不全症候群
心臓は効率よく動くために、電気信号で制御されています。右房にある洞結節で作られた電気信号は心房を興奮させながら心房を伝わり、心房と心室の間にある房室結節を通って心室を興奮させ、心臓は収縮します。
洞不全症候群とは洞結節がダメになってしまう状態です。とは言えすぐに心臓が止まってしまうと言うわけではありません。他の心筋細胞が期外収縮と言う「助け船」を出してくれるのですぐに命を落とす心配はありません。
ただ洞結節は機能が落ちているので何らかの不整脈が出た後にすぐに電気信号を作ることができないので一時的に心臓が止まってしまうことがあります。
その結果めまいやふらつき、失神を起こすことがあります。
房室ブロック
房室ブロックとは心房と心室の間にある房室結節が電気信号を伝えられなくなっている状態です。
症状は洞不全症候群同様めまいやふらつきを訴える方もいますが浮腫や呼吸困難といった心不全症状が出るまで気がつかない方もいます。
また病的な意義のない生理的な房室ブロックというものもあるので、必ずしも治療が必要とは限りませんので心電図をよく観察することが必要です。
徐脈性心房細動
心房細動は頻脈が問題であると書きましたが、慢性心房細動に長期罹患していると加齢とともに脈が遅くなり心不全を起こすこともあります。これを徐脈性心房細動といいます。
検査と治療
心電図、ホルター心電図を行い診断します。徐脈性不整脈は予兆として、めまい、失神、意識消失などを起こしていることが多いので、そのような症状がある場合にもホルター心電図などをお勧めします。
いずれの徐脈性不整脈も治療はペースメーカーの植え込みになりますが、リードの留置部位やペースメーカーの設定が異なります。
ペースメーカーの植え込み手術が必要と診断した場合には、連携病院に紹介します。
当院の院長は地域間病院で長期にわたり外来でペースメーカー管理を行っていた実績があり、ペースメーカー手術後に当院でのペースメーカー管理を希望される方はご相談ください。